社会的環境満足分類において、最も多い相談は「宗教」に関する相談です。
メディカルシステムサービスが支援する外国人材の多くはインドネシア人で、その7割がイスラム教徒です。イスラム教は多くの宗教の中でも戒律が多く、様々な配慮が必要となります。
その中でも最も多い相談は、勤務時間中の「礼拝」に関する相談です。
外国人材の募集に際し、最初に質問を受ける内容が「職場で礼拝することは可能か?」「宗教上女性が被るヒジャブを使用するこができるか?」とうものです。
母国では当たり前で問題にすらならないことばかりですが、彼ら自身、職場の宗教への理解について、不安に思っていることが伺えます。
イスラム教について
イスラム教徒の5大義務は、「礼拝」「喜捨」「断食」「巡礼」「信仰告白」ですが、特に毎日の生活に深く関わり、最も重要なのが「礼拝」です。
礼拝は、太陽の位置によって決められた時間に毎日行うことが基本で、日の出前と日没後、昼間2回と就寝前の一日合計5回行います。
しかし、信仰の度合いや、そのときの状況により、2回の礼拝を1度でおこなったり、またおこなわなかったりと、柔軟性がある人もいます。具体的には、移動中であったり、仕事中でやむを得ない場合は、簡易的な礼拝によって済ませたり、礼拝自体をおこなわない場合もあるため、毎日必ず5回礼拝をするとは限りません。
介護現場における対応
介護現場においては、日勤帯の場合、勤務前に1回、昼休みに1回(2回分)、勤務後に自宅で1回というサイクルとすることもできるため、勤務に支障が出ることはありません。夜勤の場合は、早朝の休憩の際に1回ということになります。
礼拝の手順は、水で顔、耳、口、手足等を清めてからおこないます。そのため、洗面所など水周りの近くに場所を設けることが理想です。礼拝をおこなうための広さは1畳程度あれば十分で、人に見られても問題ありませんが、礼拝に集中する必要があるため、介護現場では、使っていない浴室の脱衣所や、相談室、階段の踊り場、ロッカールームなど静かで清潔な場所が望ましい。
そこでメッカの方角に向けて小さな専用の絨毯を敷き、男性はひざまずいて、 女性は頭から足の先まで全身が隠れる布を被って5分程度おこないます。
当人が礼拝をするしないに関わらず、礼拝の場所を用意し、礼拝を配慮した休憩時間を提示すると、彼らは事業者の宗教への理解に対する感謝の念を持ち、ロイヤリティの向上につながり、長く働こうという意欲をもつようになるでしょう。
また、礼拝をすることで心が落ち着き、精神的に安らぎを得るため、その後の仕事もはかどるという効果もあり、礼拝によって業務効率が上がり、落ち着いて仕事をすることができます。
このようにわずかな配慮によって、外国人材との信頼関係を築くことは可能であり、逆にそれを認めないというのは、個人を否定するに等しく、やる気を失わせてしまう一因にもなるのです。